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介護と仕事の両立事例について佐藤家の事例もご紹介。factoriaVOICE「ライフステージが変わっても、その働き方で大丈夫?_介護編❷後編」
更新日:4月4日

杉並区西荻窪にあるコワーキングスペースfactoriaのメンバー同士が、自分らしい働き方についてあれこれディスカッションするコンテンツ、factoriaVOICE。
今回は、前編からの続き「ライフステージが変わっても、その働き方で大丈夫?_介護編❷後編」です。介護が始まる2パターンと初動の対応に加えて、介護と仕事の両立事例についても佐藤家の事例をご紹介しています。
私factoria佐藤が、ある日突然始まった遠方に暮らす親の介護により、スモールビジネスオーナーが仕事と介護を両立する難しさや問題点に直面したことが、企画の誕生背景となっています。 私の様なスモールビジネスオーナーが、介護当事者となった場合の介護と仕事の両立という危機管理について、メンバーのお二人(介護とコーチングの専門家)と共にディスカッションしていますので、ぜひ、皆さんの危機管理に役立てていただければ幸いです。
それでは「ライフステージが変わっても、その働き方で大丈夫?_介護編❷後編・介護が始まる2つのパターンと初動の対応」を一緒に学んでいきましょう!
介護が始まる2つのパターンと初動対応とは?
佐藤 社会との繋がりは、すごく重要ですよね。 ここまでは、健康な状態からプレ・フレイル、フレイル、要介護という段階、流れがあるよっていうお話だったんですけれど、次のトピックは、介護の始まり方とその際の初動対応について話していきたいなと思います。 始まり方には2パターンあって、1つ目が我が家の様なある日突然始まるパターン、2つ目がじわじわパターンとのことですが、瞳さんがご存知の中で、介護がある日突然始まるパターンとはどんなことがキッカケやイベントとなっているのででしょうか?
瞳さん 例えば、脳出血で突然、プチっと血管が切れてしまったり、突然、血管が詰まってしまう脳梗塞や心筋梗塞などの血管系ですかね。
佐藤 母も同様です。脱水→熱中症→血管障害(幾つもの小さな脳梗塞)が起因し、ある日突然介護が必要となりました。
瞳さん ある時までは元気だったんですが、血管障害が起こり、突然倒れて、病院に運ばれる。そこから家族に連絡が入り、体に麻痺が残るなどあれば、その時点で早めに介護保険の申請をしたり、急遽入院となったら、入院の準備や手続きで身元引受人などの契約書にサインしたりという対応が出てきますよね。 また、入院期間が長引けば入院費用の工面をしなければいけなかったり、親の金融機関機関や通帳はどこなのかなど、その時点で、親から教えてもらえないとしたら、 大変ですよね。
入院費用の立替や事前に親の金融機関口座や資産、クレジットカードの所持の有無など、必要な時にお金を引き出せる準備はしておいた方が良いかもしれないですよね。今は、銀行でもファミリーカード(代理人カード)があるみたいですしね。 親から金融機関情報を聞き出すのは難しいかもしれないのですが、よほどの信頼関係があったり、本当に腹割って、終活を意識して話をしていく状況を作っていかないと誤解が生じかないので、結構デリケートですよね。 いざとなった時に子供世代が対応できるように、一緒に仕組みを作ろうよという方が親も入りやすいかもしれないですね。
佐藤 瞳さんのおっしゃる通りで、親が健康なうちに、医療介護に関する希望や具体的な対応についての話をしておくのは、非常に大事だと痛感しました。 では、ある日突然介護が始まるパターンの場合の初動対応について、私の経験を共有させて頂いても宜しいでしょうか?
瞳さん、恵子さん
ぜひ。
ある日突然介護が始まった、佐藤家の事例と初動対応の紹介
佐藤 我が家のケースなので、各家庭の状況に沿う様に詳細を調べた方が良いという前提で、ご紹介させて頂きます。
私は、大枠では介護もビジネスも考え方は一緒、リソースも一緒と考えたんですね。
そこで、まずは初動対応の前提条件について考えました。
今思えば、私はたまたま、factoriaという場所のおかげで、瞳さんから常々「介護って1つのプロジェクトですよ」と聞いていたこともあり、介護も一つのプロジェクトだと捉えていたんだと思います。 そんな事前知識があったので、会社がプロジェクトを継続するために必要と言われている4大リソース【ヒト、モノ、カネ、情報】に分類して、介護のリソースも考えていけば良いと考えたんですね。
一つ一つ紹介すると、 ・ヒト(人材、チーム)=介護する家族、友人知人やご近所さんとの連携やサポート体制の有無 ・モノ(データ)=介護前の健康な状態と介護開始してからのデータ〜健康診断や定期検診時の結果、持病の有無、薬の服用の有無、かかりつけ医の有無、毎日の状況を記録(水分量、睡眠時間、食事量) ・カネ(貯金残高、資金繰り/出納の把握=年金、保険、クレジットカード、ローン/借入、不動産、ビジネス)=出納把握と管理や手続き、印鑑の有無 ・情報=各種申請制度と適切な精査加療可能な医療機関や専門医の情報〜医療保険制度(高度療養制度、自立支援医療費など)、介護保険制度(地域包括センターを含む)、認知症の場合の個人賠償補償制度(制度の有無は自治体ごとに異なる)、労災/確定申告/年末調整(親や配偶者を扶養する場合に介護する人が行うこと)、精査加療可能な大学病院や総合病院などの医療機関や専門医の把握
これが、まず前提としてありますと。まだまだ先は、長いですねw
やっとここから、本題の初動の対応をどうするか?という話に移れるんです。 我が家、母の場合は、介護が突然始まるパターンで且つ精神疾患がみられた場合だったので、初動の対応がものすごく重要だと感じました。 その理由は、家族や周囲が異変に気付きやすい精神疾患がみられるのは、もしかすると、脳梗塞や甲状腺機能、膠原病など器質的疾患が要因かもしれず、その器質的疾患の除去及び精査加療を早急に行う必要があるからなんですね。 (※器質的疾患:細胞や組織が損傷されたことにより、血管障害や感染症などの症状として現れる疾患のこと) 母の場合は、精神科病院の初診が容態急変日から2週間後、大学病院のもの忘れ外来の初診が容態急変日から1ヶ月後でしか予約できなかったので、一刻も早く、脳梗塞などの器質的疾患の除去をするために、すぐにMRI検査と診断が可能な脳外科外来のある病院やクリニックを探しまくり、どこにこんな力があるのかと思うほどに力強く抵抗する母をなんとか車に乗せて、弟に病院に連れて行ってもらい検査をしてもらいました。実は、MRI検査がすぐに可能な医療機関を見つけるのがとても大変でした。
恵子さん 最初に病院に行くまでに、佐藤さんのお母様の場合は精神疾患が見られたので、精神科から受診されたけれども、それがなければ、認知症の診察を受けるために1ヶ月くらいは待たなければいけないのでしょうか?
佐藤 どうでしょうか。母の場合は、大学病院のもの忘れ外来の初診までに1ヶ月待ち、その後2ヶ月間に幾つもの精密検査をして、発症から3ヶ月後にレビー小体型認知症と診断されました。 町医者にも認知症の専門医はいるので、そちらに受診もできるますが、町医者と大学病院とでは、MRI、RI(脳血流シンチ検査)など精密検査の種類や検査機器が異なるので、私は大学病院や総合病院で、しっかりと調べ尽くしたかったので、精神科病院やすぐにMRI検査可能な脳外科専門医に通いつつ、もの忘れ外来の初診まで1ヶ月待ちました。 というのも、精神疾患は初老の鬱かもしれないし、認知症の前駆症状かもしれない、はたまた器質的疾患かもしれないので、大学病院での精査加療は必須と考えていたからです。
恵子さん 気になったのは、大学病院のもの忘れ外来に行くまでの1ヶ月間はどういうことになっていたのでしょうか?
佐藤 基本的には、家族で看病、介護をしていました。 母が容態急変した1週間目は、私も弟もすぐには遠方の実家に帰省できなかったので、父だけでなんとか乗り切ってもらいました。急性期だったので、非常に大変だったと思います。 その時の母は、24時間ずっと歩き回り、全く寝なずに、食事や水分も一切拒否していたので、脱水症状で、近場のかかりつけ医に点滴を投与してもらったり、せん妄から警察に3回電話し、警察から私や弟に深夜に電話が入ったりしていました。
2週目からは、弟が帰省してくれましたが、正直、驚愕していましたね。 弟が帰省してからは、MRI検査がすぐに可能な病院や精神科病院の初診へ連れて行ってもらったり、24時間ほぼ寝ない母を父と弟が交代で診てくれていました。
3週目に、私が帰省し、父と弟と3人で母を24時間体制で交代で診ていました。
母は薬の効果なのか少しは眠ってくれる様になりましたが、それでも24時間ほぼ眠らない時もあるし、寝たと思ってもすぐに起きて家中を歩き回ったり、せん妄などの精神症状があったので、我々も疲労困憊でしたが、常に見ておく必要があったので、大変でした。
かかりつけ医や精神科病院担当医からは、措置入院も打診されたのですが、私達家族は、入院させたくなかったんです。それでも、急性期の間に3回ぐらいはもう無理だ....と疲れ果て、措置入院をさせようかと思ったこともありましたが、入院前日や当日に、やっぱりそれはしたくないと思い止まりましたね。 思い止まった要因としては、精神科に入院すると、家族の意思では退院させられなかったり、身体拘束があったり、医療従事者の友人知人からはなかなかお勧めできないよという答えも返ってきたこと、また、初老の精神症状の発症は、認知症(前駆症状も含む)または初老鬱かの判断が難しいため、客観的データを基にした専門医による器質的疾患の除去と精査加療が必須で、そのために大学病院のもの忘れ外来に受診させたいと考えていたのですが、別の病院での精密検査とはいえ一時外出できるかどうかは確約できないと言われたことが大きな要因だったと思います。 精神科の診断は、症状・経過・医師の経験を基に診断され、認知症専門医がいるもの忘れ外来の診断は、血液検査、神経心理学検査、CT、MRI、RI等の客観的データを基に診断されるので、精神症状の要因については精神科医と認知症専門医と両方受診してみないとわからないわけですよね。なので、セカンドオピニオンを取ることは絶対にやりたいと思っていましたね。急性期でとても大変でしたが、精神科病院に入院させなくて本当に良かったと思っています。
恵子さん セカンドオピニオンは大事ですが、あまり取ってなさそうなイメージなんですが、実際どれぐらいの人が受けているんでしょうか?
瞳さん 統計を調べてみないとわかりませんが、私の肌感覚で言うと1割いるかな、いないかなという感じですかね。
恵子さん 親が病院に行くとなったら、多分、セカンドオピニオンが必要だとは頭にあまりなかったですね。最初に行った病院で、例えば認知症で、介護度合いは〇〇ぐらいかもねと診断されたら、納得というか、そうなんだと思うなと。
佐藤 私の場合は、親族や友人知人に、医療従事者が多かったこと、認知症専門医や膠原病専門医がいたので、とにかく聞きまくったんですよ。セカンドオピニオンどころじゃない程にw 皆に聞きまくった結果、もしかすると認知症かもねという意見が多かったこともあり、やっぱり精神科病院の医師の診断は一つの診断としつつ、しっかりと精密検査してみないと分からないとの判断に至りました。 そんな経験から、私は、セカンドオピニオンを取った方が良いかなと思います。
本題の【初動の対応】についてですが、
先程の介護をプロジェクトと捉える考え方に準ずると、介護の初動や対応もプロジェクトマネジメントと一緒で、「PDCA(戦略/方針、計画、進捗確認/評価、対策/改善)」という流れでやっていくのがいいのかなと思っています。 私の経験を共有させて頂くと、PDCAの前に、下準備として現状把握をしました。 それからPDCAのP・戦略や方向性を決めて、D・計画立案とアクションピラン作成、CとA・進捗の確認と対策や改善は随時、同時進行で行いました。 具体的には、こんな感じです。
・下準備/現状把握:何をすべきかがわからないので、思考の整理をするために「何をしたらいいか?」という問いを立ててのロジックツリー作成とそこから抽出した確認事項のリスト化 Plan/構想:戦略、方針を決定▶私の場合、ロジックツリー作成で自分にできることとできないことを明確にした。下準備から得た情報をまとめ、全体像の把握をし、方針を決めた。 《自分にできることとできないことの事例》 ・私ができること:両親を喜ばせること、全体像の把握とアクションプランの作成、お金を稼ぐこと ・私にできないこと:母をコントロールすること、つききりでの介護、医療的ケア 《基本方針を決める際に作成した仮説の事例》 ・施設介護の場合の費用シュミレーションを作成 ・在宅介護の場合の介護サービス利用と家族による介護割合のシュミレーションを数通り作成 Do/計画:介護の遂行に向けてヒト、モノ、カネ、情報の計画立案▶︎アクションリスト作成、ガントチャート作成とGoogleカレンダー設定 Check&Action/計画の進捗状況の把握と確認や評価と対策や改善▶︎Googleカレンダーでリマインダー設定していることを遂行する。担当者が未実行の場合は、フォローアップ。また、Googleスプレッドシートで、毎日、睡眠時間、水分量、食事内容と量、気になった点などを記録し、診察時にドクターに共有。通院後は薬の服用の有無も記録 私は、頭の中を整理したかったので、こういったものを作りましたが、情報を調べ尽くしたりとすごく大変でしたし、これを皆がやる必要はないと思うので、これを使えるのであれば、必要なものをプラスマイナスしながら活用してくだされば良いなと思います。これ、ほんと、大変でした〜w

恵子さん 仕事だとやりますが、実際そこまでできる人はなかなかいないですよね。
佐藤 私の場合は、仕事と一緒で、自分で調べ尽くさないと納得しないんですよ。専門家がアドバイスしたことは、それは1つのやり方であって、では実際はどういう風にやったらいいか、どうやったら出来るかっていう風に考える傾向があって。執着心が強いっていうかw
瞳さん やっぱりタスク整理することで、向き合いやすくなりましたか?